相続放棄の適用範囲について
母と私と弟で共有する土地について、母が亡くなったため相続手続きをしようと思ったのですが、事情により相続放棄を考えています。
その場合、相続放棄の対象となるのは
ア.死亡した母の所有分のみ
イ.私の所有分を除くすべて
ウ.私の持分を含むすべて
のどれが正解でしょうか?
また、父が亡くなったときに建てて母が使用者となっている墓地があるのですが、それも放棄の対象となる(私が使用者を引き継げない)のでしょうか?
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- くすのき司法書士事務所
金子 正行
アとなります。
ご相談内容に対するお答えは、原則として、アとなります。
但し、次の点でご注意ください。
・不動産だけでなく母親の財産(負債も含め)すべてを放棄することとなること。
・相続放棄は、相続を知ったときから3ヶ月以内にする必要があること。
・祭祀は、相続財産にあたらないので、相続放棄の対象にならないこと。母の指定があればその人に、指定がなければ慣習で、慣習もなければ家庭裁判所に決めてもらことになること。
くすのき司法書士事務所
担当司法書士 長友智司
- くすのき司法書士事務所
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- リアルバリュー法律事務所
梅村 正和
相続放棄できるのは相続財産のみです。
前から自分名義になっている部分は相続した財産ではないので
相続放棄とは関係ありません。
相続放棄すれば、母名義の部分について相続する権利がなくなり、
相続人が質問者様と弟の2人だけであれば、母名義の部分全てを弟が相続することになります。
相続について規定した民法896条本文は、
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」
と規定していますが、例外的に、祭祀関係のものについて、
民法897条で
「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、
慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」(1項)
「慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める」(2項)
と規定して、祭祀関係の物と相続財産を区別しています。
したがって、墓地については民法897条によって決められることになります。
親族間で争いがなければ、通常は、親族間で決めた人が管理することになるでしょう。
親族間で争いがあれば、民法897条2項のように、家庭裁判所に申し立てて判断してもらうことになります。
- リアルバリュー法律事務所
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- ひだまり法律事務所
芝 憲司
相続放棄の対象となるのは、死亡した人の財産のみです。ご相談者の方やその弟さんの財産は関係ありません。
また、お墓などの祭祀用財産は相続法の規定とは離れて承継されるので、相続放棄の対象とはなりません。
- ひだまり法律事務所
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- さんよう司法オフィス
岩本 美智雄
亡くなられたお母様の持分の内、ご相談者様が相続されるはずであった部分が相続放棄の対象になります。
相続放棄されるのがご相談者様だけであれば、お母様の死亡により今般ご相談者様が相続するはずであった部分についてのみ相続放棄の対象になります。
ご相談者様が放棄された場合、特にご事情がなければ、放棄された部分は他の共有者である弟様の所有になるものと思われます。
墓地に関しては、一般の財産とは別扱とする規定がありますので、引き継ぐことは可能です。 - さんよう司法オフィス
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- 司法書士行政書士 児玉事務所
児玉 卓郎
回答
相続放棄とは債権債務も含めて母親の財産すべてを放棄する手続きで家裁の届ける必要があります。単に家だけ母の持ち分を弟さんに譲るのであるなら、相続放棄手続きを取らなくても分割協議により母の持ち分は弟が相続する旨の分割協議書を作成すれば足りると思います。自分の持ち分はいらないというのであれ、持ち分放棄を登記原因として弟さんに持ち分が移転します。相続放棄手続きを取らない限り墓地の使用権も相続されます。
- 司法書士行政書士 児玉事務所
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- 司法書士法人 すえなが事務所
末永 博
どうして放棄するのですか?
答えはアになります。
お墓については、その地域の慣習となりますのであなたが承継できる可能性はあります。
あなたが長男であればなお可能性は強いでしょう。
不動産持分の放棄ですが、あなたたちが放棄した後、次順位の相続権者がいればその人、いない場合でも特別縁故者がいればその人がその持分を承継することになります。
あなたたちが知らない人と土地を共有することになります。それでもいいのですか。
もっとも、特別縁故者がいなければ、お母さんの持ち分が結局あなたたちの者になる可能性があります。
そうすると相続放棄したのに、お母さんの持ち分を取得できることになります。
結果はよかったということになりますが、そのやめには相続財産管理人を選任する手間、時間がかかります。
その間はその土地を売るとか担保に入れるとか賃貸するとか自由に処分をすることができません。 - 司法書士法人 すえなが事務所
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- 士道法律事務所
飯島 充士
・その3つの中では「ア」です
・相続と祭祀は別です相続放棄で放棄の対象となるのは「遺産」、すなわち被相続人の財産と債務ですから、その3つの中から選んで回答せよと言うことであれば「ア」となります。
なお、共有物の場合、共有者の1人が死亡して相続人がいない場合、民法958条の3の特別縁故者への財産分与を行ってもなお相続財産が残る場合、その持分は他の共有者に帰属します(民法257条、最判平成1.11.24)。
つまり、あなただけ放棄すれば母の持分は相続で当然に弟が取得するし、あなたと弟が放棄して特別縁故者がいなければ母の持分は257条であなたと弟のものとなるということです。
墓地使用権等祭祀に関する権利は相続とは切り離して考えられるので(民法897条1項)、相続放棄したから墓地を使えなくなるというわけではありません。 - 士道法律事務所