遺言書がある場合の相続について
3人兄弟の長男です。
母は既に亡くなっており、弟と妹がおり二人とも結婚しています。
父所有の宅地、畑、山林等がありますが、父がなくなった後のことを心配し、すべてを私に相続させるという内容の正式な遺言書を作成してくれてあります。
家は、最近、私が新築し私の名前で登記済です。
遺言書はありますが、遺留分のこともあり心配なため、約1年前に、相続時精算課税制度を利用し、宅地や家付近の畑等を贈与で私に登記しました。
相談ですが、
① 贈与で私に登記した分については、相続時の相続財産に含まれてしまうのでしょうか?
② 父が亡くなった時に、相続する権利のある私の兄弟の誰かが、誰々外2名で登記できてしまうのでしょうか?また、それを防ぐためには、どうしたらいいのでしょうか?
③ 父が私のために遺言書を作成してくれていますが、登記はいつ、どのように行ったらいいのでしょうか?
よろしくご指導願います。
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- 司法書士行政書士 児玉事務所
児玉 卓郎
回答
①贈与の登記でもそれは遺留分減殺請求の基礎になります。遺留分減殺の限度を超えていることを認識していることが必要です。
②遺留分減殺請求による場合も共同申請によりますから、遺留分検車単独ですることは出来ないはずです。ただ遺留分減殺について話がまとまらず、家裁の調停、審判で確定した場合は単独でできますが。
③公正証書遺言書と父の最後の戸籍謄本(死亡記載があるので)と、貴殿の戸籍抄本、住民票があれば、残りの不動産について公正証書による相続登記が出来ます。 - 司法書士行政書士 児玉事務所
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- ひだまり法律事務所
芝 憲司
1 生前の贈与であっても、相続分の前渡しという扱いを受け、相続財産に含まれます。
2、3
遺言の効力について多少考える必要がありそうですが、すべてを相続させる遺言があれば、他の兄弟に遺産の権利が帰属することはありません。したがって、相談者の方が単独で、遺言書と自分が相続人であることを証明できる書面を用意すれば登記をすることができます。
ただし、不動産登記は形式的審査をするのみなので、他の兄弟が法定相続分にしたがった登記の申請をした場合には、登記がなされてしまうおそれはあります。これを防ぐには、はやく登記をしてしまうことです(後で更生登記を入れれば問題はないのですが)。
なお、他の兄弟には遺留分があるので、その点について考慮する必要があります。
- ひだまり法律事務所
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- やまと法律会計事務所
大和 弘幸
① 特別受益としてみなし相続財産に含まれるか,そうでない場合でも,遺留分算定の基礎に含まれうることになります。
②③ お父様が亡くなったのち,直ちに遺言書に従って登記すべきです。お父様所有の不動産のうち,一部は,贈与を原因として移転登記済みであるが,お父様名義の不動産も残っている。そのような状況の下で,質問者に全部相続させるという遺言書がある,という前提でよろしいでしょうか。
① 相続時精算課税制度というのは,税を優遇することにより,生前贈与をしやすくする制度です。その制度を利用することと,生前贈与が相続財産に含まれることになるかどうかは,直接の関係はありません。
民法では,特別受益といって,例えば被相続人から生計の資本として共同相続人の一人が贈与を受けた場合など,その贈与は,相続財産に含まれるものとみなして,相続分を計算するという規定があります。この規定の要件を満たすと,その贈与分は相続財産に含まれることになります。ただし,特別受益については,遺言で,持ち戻しを免除することが可能です。
次に,仮に,生前贈与が特別受益に該当しない場合であっても,原則として,その贈与が相続開始前1年間にしたものであれば,その贈与の価額が遺留分の算定の基礎とされることになります。
② お父様名義の不動産について,お父様が亡くなったのち,共同相続人全員の共有名義の登記をあなたが関与しないところでなされる可能性はあります。それを,防ぐために,今回,遺言書を用意されれているのだと思います。お父様がお亡くなりになったのち,直ちに,遺言書に従って登記をするべきでしょう。
③ 遺言書は,遺言者の死亡時に効力が生じますので,お父様が亡くなったのち,直ちに,司法書士の先生などに依頼して,登記をすべきことになります。これに対して(あるいは生前贈与分の移転登記に対して),弟様又は妹様に不服があれば,彼らがあなたに対して,遺留分減殺請求権を行使してくることになるでしょう。 - やまと法律会計事務所
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- 司法書士法人 すえなが事務所
末永 博
お答えします。
①相続税の計算上は相続財産に含まれてしまいます。
②通常は相続の登記をする場合遺産分割協議によりますので、あなたが知らない間に登記がされるtことはありません。ただし、法定相続分で登記することは可能です。それでも、あなたが相続するという遺言書がありますので、あなたが相続人であるという登記にすることができます。
以上は相続時精算課税を利用しないで、あなた名義の登記がされていない場合のことです。あなた名義がされていれば何の問題もありません。
③あなた名義の登記がされているので、それ以上登記をすることはありませんし、できません。 - 司法書士法人 すえなが事務所
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- 渡辺司法書士事務所
渡辺 和彦
重大な問題が生じる可能性がありますので、相続財産の評価を一度よく検討したほうがいいでしょう。
①に関しては、民法上、「特別受益」とみなされる可能性が高いと思われますので、弟・妹らが後日、遺留分(相続財産の各6分の1)の支払を求めてきた時に問題が生じると思われます。
②に関しては、貴見のとおりです。相続人中の一人からだけでも法定相続分通りの登記(各人3分の1の共有)はできてしまいます。そのため予防の意味でも、お父様が亡くなったら遺言に従って速やかに相談者の単独名義とする相続登記を申請してください。
③に関しては、実務上はお父様死亡の事実が戸籍に記載された時から可能です。戸籍への記載は死亡診断書を役所に届けてからですので、現実には死亡後約2~4週間後が目安でしょう。とはいえ、必要書類の収集にも時間がかかりますから、生前のうちに手配できる必要書類は準備しておいたほうが良いでしょう。
なお、お父様の残してくれた遺言書は公正証書遺言でしょうか?そうでない場合はお父様の死亡後に相続人全員を招集して家庭裁判所で「検認」手続が必要になるため、煩雑かつ相続人間のトラブルが頻発します。
- 渡辺司法書士事務所