財産〈死亡保険金〉の横取りについてお伺いします。
昨年、友人が病気で他界しましたが、彼には十数年前に離婚した際、妻との間に一人子供がおり、母方に引き取られております。
今では彼も立派に成人しておりますが、父親の他界に際して当然相続人として加入している保険金の請求権が発生する訳ですが、父親の姉がこの保険金に目を付けており、当惑しています。
父親の姉には第二順位としての相続権はあっても、二十歳過ぎの若者が第一順位の請求権者としておられる為に、父親の姉はどのようなことをしても直接保険金を請求し、自分の懐に入れることは出来ない筈ですが、そうすると、保険金請求ではなく、請求権者の請求により振り込まれた金銭を直接要求することとなってしまいます。
この正当な相続権者に振り込まれた保険金に目を付け、実際にその金銭をせしめる行為は、法律上、どのような意味を持つものでしょうか。
また、防ぐ手立てはないものでしょうか?
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- 司法書士・行政書士 加藤康秀
加藤 康秀
理由のない請求には毅然とした態度で臨むことが必要です。
相続権のない者には相続財産(負債も含めて)を受け継ぐ権利はありませんので、不当な要求であれば、丁寧ではあっても、毅然とした態度で臨むことが必要です。
なお、ご質問に対する回答の要旨からは外れますが…
生命保険の死亡保険金は相続財産になる場合とならない場合があります。
厳密な判断は非常に難しいのですが、一般的な従来型の生命保険であれば、相続財産にならない(相続財産を構成しない)ことが多いようです。
これは、生命保険の死亡保険金は、死亡と同時に指定された受取人に請求権が発生すると考えられているからです。
このことは、保険契約で受取人を「法定相続人」と指定した場合も同様であると言われています。(詳しくは、そのご加入の保険会社にお問い合わせを頂くのが確実かと思われます。なお、相続税の問題とは別次元のことであるとお考えください。)
もし仮に、相続や死亡保険金の問題とは別に、亡くなった方のお姉さんが、葬儀費や医療費の負担等をしていたのであれば、それらに関しては検討をする必要はあろうかと思いますが、そのような事情や理由がなければ、やはり応じる必要はないかと考えられます。 - 司法書士・行政書士 加藤康秀
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- 渡辺司法書士事務所
渡辺 和彦
被相続人が実子を受取人に指定した生命保険金については、他の相続人が遺産分割の対象とすることは原則としてできません。
文脈から推測するに、被相続人は離婚した妻に引き取られていった実子を生命保険金の受取人に指定されていたものとお見受けします。実子は既に成人しているとのことですので、実務上は特段の事情がない限り、保険会社は実子名義の預金口座に支払って手続終了となると思われます。
問題は実子名義の預金口座を被相続人の姉が差押等の行為が出来るか否かですが、受取人が指定された保険金はそもそも指定受取人固有の財産であり、原則として遺産分割の対象とはなりません。
したがって被相続人の姉が保険金の返還を請求する法的根拠はご相談内容から判読する限りでは乏しいといえるでしょう。
強いていうならば、被相続人の姉が被相続人の実子に対して何らかの債権(貸金・立替金等)がある場合にはこの債権回収にために訴訟を提起したり、当該預金口座に対して仮差押等をしてくる可能性があります。
いずれにせよ、保険会社は原則として実子の受取口座を第三者に告知することはありませんので、防衛策としては受取口座を知られないように留意すべきでしょう。 - 渡辺司法書士事務所