無料で父の土地を借りて家を借りた場合、相続時受けた金銭的恩恵は相続に影響するか。
1)私の弟は昭和53年ごろ父の保有する土地を無料で借りて、自宅を建て住んでおり、この地代分の金銭的恩恵を受けています。
なおこの固定土地の固定資産税を父が払っています。
父の資産はその土地以外にも父が住んでいる自宅の土地、駐車場として貸している土地、預金、有価証券などかなりの資産があります。
相続人は母(脳梗塞として入院中で1年以内に死亡する可能性が高いと思われます。)、弟および私の3人です。
父の資産の相続時に受けた金銭的恩恵は相続の分配に影響するでしょうか。
2) もしそうでしたら、父の死後弟が父の保有する土地を無料で借りていることを弟が否定すれば、これを証明することが困難と思われますが、父に弟が父の保有する土地を無料で借りていることを証明する文章を書いてもらうことは、法律的に有効でしょうか。
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- 司法書士行政書士 児玉事務所
児玉 卓郎
回答
無償でかつ固定資産税も父親に支払わせていたとしたら、賃料相当部分は特別受益と言えるでしょう。もし弟が父に支払ったと主張するなら、通帳等で金の流れを証明しなければならないと思います。
- 司法書士行政書士 児玉事務所
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大和 弘幸
父が父の土地を弟に無償で使用させることは,特別受益にあたると考えられますので,相続分の算定に影響を与えます。
質問1)につきまして
共同相続人の一人が,被相続人から生計の資本として贈与を受けている場合(特別受益といいます。),被相続人の死亡時の相続財産の額に,この贈与の額を加えた額を相続財産とみなし,相続の分配を計算します。
父が,弟に,父の土地を無償で使用させていることは,法律上は使用貸借権の設定にあたると考えられますが,これも,父の負担において弟が経済的利益を得ているといえるので,特別受益に該当すると考えれます。従って,父が亡くなった場合,その時の父の相続財産に,上記の無償使用分を加えたものがみなし相続財産となり,弟の法定相続分4分の1から,無償使用分を控除したものが,具体的な弟の相続分となります。
質問2)につきまして
使用貸借権の設定は民法でも規定されている典型的な契約類型ですから,父と弟の合意のもとで契約書を締結することができます。弟にも契約書には署名をもらいましょう。
なお,質問には,「父の死後弟が父の保有する土地を無料で借りていることを弟が否定すれば,これを証明することは困難と思われます」と書かれていますが,この土地の固定資産税を父が払っているということなので,この土地は父の名義ですよね。そうであれば,父名義の土地の上に弟名義の建物があることになり,賃料を払って土地を借りているという借地契約を弟が示せない限り,弟が無償で父から借りているということはそれほど証明が難しくはないように思えます。
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芝 憲司
1) 弟さまが土地を使用されているのがお父さまの意思に基づくのであれば、法律上、遺産の配分にあたって考慮することを求めるのは難しいと思います。もっとも、話し合いの中でそれだけ利益を受けているのだから、少し少なくとも我慢してほしい等といった具合に説得材料にはなり得ます。その意味では考慮される可能性はあると言えましょう。
2) そのような文書を作成するとなると、その書面の法律的意味はお父さまと弟さまとの間に「使用貸借契約」が成立していたことの証拠になります。が、現状弟さまが使用されており、お父さま(相続人も含めて)が賃料を請求するつもりがなければ、あまり実益がありません。
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飯島 充士
(1)事実上考慮はされるでしょう
(2)有効といえば有効ですが実益がありません(1)まず、土地等を無償で貸借する契約は「使用貸借契約」といって、民法上も規定されているれっきとした契約です。弟は対価を払うことなく土地を利用していますが、そのこと自体は何ら不当なことではないので、「地代分の金銭的恩恵を受けている」というのが必ずしも正確な理解ではないことを念頭に置いておいてください。
その上で、無償で土地を利用していたことが遺産分配の際に考慮されることはあります。ただし、不当に賃料相当額の利益を享受していたわけではありませんので、「事実上、ある程度考慮され得る」という程度と考えておいた方がよいでしょう。
(2)使用貸借の事実を弟が否定するということがまず考えにくいのですが…他人である父の所有物である土地を借りて利用するということは、基本的には(やや特殊な契約を結んでいない限り)使用貸借契約か賃貸借契約のいずれかがあるということです。仮に弟が賃貸借だったと主張するなら、賃料を支払っていた証拠を提出させればよいのです。使用貸借を証する書面を父と弟の「両名に」書いてもらえば、それは確かに使用貸借の存在を示す証拠にはなりますが、実益がありませんし、不信を買うだけですので、止めておいた方がよいでしょう。 - 士道法律事務所